2008年5月22日木曜日

まだ極めて冷静なうちに、大動脈瘤破裂予防手術を知ろう!

 元気で、あまりくよくよしていない現段階。先々予想される治療方法を認識して置くのも、To prepare for the worst,まさかの時の心の準備となるでしょう。

つまり、冷静沈着に最悪の事態を、イメージしておくのも、ある種のリスクマネージメントになると考えるからです。それと、いくら強がりをいっても、怖いものは怖いのです。あまり、手術真近になって、ことの事実を知らされるよりも
あまり、切実に感じられない今の段階に研究する方が、精神的に楽であろうという思いもあります。前置きはこれくらいにします。

◆ 大動脈とは、全身に血液を送る大血管のことです。大動脈はまず心臓から頭側に向かって出ると、弓状にカーブを描き、胸部の左後ろを下に向かって走行します。そして横隔膜を貫いて腹部に入り、臍の少し下の高さで左右に分かれますが、一般的にここまでを「大動脈」と呼びます。この間で、人体の各部へ送られる血管が枝分かれしています。横隔膜の上を胸部大動脈、下を腹部大動脈と呼びます。

◆大動脈瘤とはこの大動脈の一部が「瘤」=「こぶ」のように膨らんだ状態のことです。一口に大動脈瘤と言ってもさまざまに分類されます。

 大動脈瘤は、症状に乏しく、健康診断や他の病気の診察中に偶然見つかることが多い病気です。胸部であれ ばレントゲンで疑われます。
 紡錘状の瘤の場合、正常の大動脈経の1.5倍以上に拡張している時に大動脈瘤と診断します。よって胸部で は45mm以上(正常30mmぐらい)を一般的に瘤と診断します。

◆手術
 紡錘状瘤の場合、まず大きさ(最大横径)によって判断します。胸部では60mm以上(50mm以上という施設もある)がだいたいの目安です。というのは、大きければ大きいほど破裂しやすいという統計的な推論があるからです。またそれより小さくても拡大速度が早ければ手術の適応となります。

◆手術の目的
 唯一最大の目的は破裂の予防です。理由は、破裂してからの手術成績がきわめて不良だからです。また、破裂すると手術にも間に合わず亡くなることがあるからです。

◆手術の方法
 瘤を人工血管で置き換えるのがメインの手技です。これはすべての瘤で同じです。
 それを達成させるために、手術には大きく二つのステップがあります。

≪第一ステップ≫
 置き換えるべき大動脈を、瘤を含めて必要な範囲だけ露出させる操作。
         

 具体的には体外循環(人工心肺)、低体温、臓器冷却などを適宜  

 組み合わせて行います。

 ポイント1  脳への血流を遮断する時の「脳保護」、

 ポイント2  脊髄への血流が遮断される時の「脊髄保護」


◆ 手術の危険性、合併症について

 「脳」と「脊髄」に関わる合併症は、どんなに工夫を凝らしてもゼロではありま  
  せん。
  具体的には脳梗塞を始めとした脳障害、
  脊髄に関しては下半身の麻痺(対麻痺といいます)。世界でトップを争う施   
  設でも、脊髄障害による下半身麻痺の頻度は8%(胸腹部瘤の場合)など  
  という数値が出ています。この分野の手術にとっては、ある意味宿命と言  
 えるでしょう。
 

  その他、心臓、肺、腸などあらゆる臓器の障害が起こり得ます。また、外科  
  医が最も忌み嫌う合併症が「出血」と「感染」です。特に胸腹部大動脈瘤は   
  「あらゆる外科手術中最も止血がやっかいな手術」と言っても過言ではな  
  いぐらいです。感染というのもどんなに注意を払っても、悪魔のように忍び 
  寄ってくることがあります。縫い合わせた皮膚が開いてしまうだけの軽症な 
  ものから、人工血管やその周囲に膿が貯まって敗血症になったり、人工血
  管が外れてしまうという重症なものまであります。
  現在、特に胸腹部大動脈瘤は侵襲が大きな手術で、その成績は外科医の   
  腕を始めとした施設の総合力によるところが大きく、
  受ける患者側は慎重になるべきと云われている。   
  www.jichi.ac.jp/ocvs/s-taa05.html  より。 
 

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